栄フィルブログ

2017年8月22日 : 曲紹介
ハイドン トランペット協奏曲の秘密

2017年11月12日開催の第56回定期演奏会の演目である、ハイドン作曲トランペット協奏曲の秘密を教えます(^^)/

これを読むと、「あなたは演奏会に来た~くな~る」 (←おまじない)

古典派のトランペット協奏曲と言えば、この曲と言われるほどメジャーな曲です。ハイドンが晩年に作曲したこの曲は、彼の最後の協奏曲でもあります。

作曲の経緯はというと、ウィーンの宮廷トランペット奏者でハイドンの友人でもあったアントン・ワイディンガー君が依頼してきたからです。ワイディンガー君は、当時発明されたばかりのキー(鍵)付きトランペットをもっていて、それを試したかったのですね~。もちろんハイドンにとっても、唇の圧力を変えて自然な倍音しか音の出なかった当時のトランペットと違い、半音階を自由に出すことができるその楽器に興味があったことは間違いないでしょう!

ということで、まずは、トランペットのお話し。これを知らないと、ハイドンのトランペット協奏曲が理解できないんですよ~。

↓ こちらがワイディンガー君の持っていたキートランペットというやつ。現在のトランペットとは違い、当時のトランペット(ナチュラルトランペット)は、唇を変化させて倍音を出すしかなかったのですが、このキートランペットは、フルートのように音孔を持っており、鍵盤を押すとフタがあいて、管の長さが変わることにより、すべての半音階が出せるようになったのです。

なんかフルートとトランペットのミックスのような感じですね~

この写真の動画(ハイドン トランペット協奏曲3楽章)はこちら

なかなか、キーの動きが興味深いです。

 

ちなみに今のトランペットはこちら ↓ これはピストンバルブを使っています。バルブ(バブルではありません)トランペットは、1830年代頃になって発明されたようです。

 

では・・・昔のトランペット(ナチュラルトランペット)はどんなん?

唇の形だとか圧力だけで音を変えるって???

↓これがナチュラルトランペット

 

↓ この楽器は腰に手をあてて吹くようです。これだと、本当に口だけで音を変えている証拠になりますね。

ナチュラルトランペットの演奏風景はこちら(バッハのブランデブルグ協奏曲第2番第3楽章 演奏者は、Jean-François Madeuf さんという、世界的なナチュラルトランペット奏者だそうです。)

うーん、本当に口だけですべての音を出している。そして、音が高い。恐るべし、ナチュラル君!

ナチュラルトランペットでは、多様な音に対応できないため、穴をあけた(小学校で使う縦笛(リコーダー)のような感じ)楽器がバロックトランペットといわれています。当時、誰かが、穴をあけるとうまく演奏できることを発見したんですね。穴の数は、1孔~4孔までいろいろあるようです。写真みても良くわからないと思うので、こちらの動画でどうぞ。指先に注目してください。この演奏は、上のナチュラルトランペットとおんなじバッハのブランデンブルグ協奏曲第2番をバロックトランペットで演奏したもの。第3楽章(8分55秒から)を比べると、上のナチュラルトランペットによる演奏がいかに凄いかわかりますね~。

さて、トランペットの歴史を理解したところで、話はトランペット協奏曲に戻りましょう。

ハイドンがこの曲を作曲した1796年は、(栄フィルが2015/11第53回定期演奏会で演奏した)交響曲『ロンドン』などで大成功を収めたロンドンの旅からオーストリアのウィーンに帰ってきた頃です。

この協奏曲の初演は1800年3月28日にワイディンガー君自身による演奏で行われましたが、残念ながらあまり評判はよくなかったそうです。さらに、オーケストラ業界では1830年代に新しく開発されたバルブ式(上記写真)のトランペットが主流を占めるようになり、ワイディンガー君の引退と時を同じくして1840年頃を最後にキイ・トランペットは世の中から姿を消して行きました。わずか半世紀しか使われなかったトランペットがこの曲きっかけになっているなんて、ドラマですね~。

その後、この曲は音楽界からは忘れ去られてしまいます。

しかしながらこの貴重な曲は、20世紀になってベルギーのブリュッセルで再発見され、以来トランペットのコンチェルトと言えばこの曲、というくらい不動の位置を占めるに至ります。楽器はなくなりましたが名曲は残ったんですね。ドラマです。

さて、曲の中身はというと、友人のために書いた曲だから?新しい楽器のために書いたから?・・・・・色々な仕掛けがあるんです。

第1楽章冒頭でまず大きな仕掛けが!

↓ ソロパートの楽譜(1楽章の最初の部分)を見てください。

まずは管弦楽による前奏7小節のあと、ソロで「ド」の低い音を1発!

聴衆はその音を聞いて『ん?今のはなに?』『低い音?トランペットの音?』『聞き間違いか?』と思うのです。

(当時のナチュラルトランペットは、唇の圧力を変えることで辛うじて自然倍音を出せるだけで、さらにこの倍音は高音域に集まっていたので、この時代のトランペットは非常に高い音域が中心でした。)

そして、その5小節後に、ナチュラルトランペットの得意な甲高い音でかつ自然倍音で構成される旋律で、『なーんだ、さっきのは聞き間違いか(-.-) やっぱりな。』『ははは、キートランペットって言ったって、ナチュラルトランペットとおんなじ高い音域で、結局は一緒やないかい!』と思わせます。

その後、前奏が終わった後はナチュラルトランペットでは難しい中低音域の全音階を使っての第1主題を吹かせて、「ホレ、どないや~」「すごいやろ~」「ナチュラルトランペットとの違いを思い知ったか、皆の者!」と言う仕掛け。(本当にそういったかどうかはしりませんが)

↓ こちらがトランペットソロが吹く第1主題。ねっ、音が低いのがわかるでしょ。

さらに、次なる仕掛けが。ナチュラルトランペットでは無理な半音階!

その後も半音階や装飾音をふんだんに使い、「オラオラ、どないや~、半音階聞いてみ~、自然倍音だけとちゃうで~」「ナチュラルトランペットでは、こんな装飾音無理やろ~」と見せびらかします(^^ゞ

↓ こちらが半音階と装飾音が続いている例です

ここまでをまとめると、

いきなり、低音1発で「おや?」と思わせる。

⇒自然倍音の高い音域で「ナチュラルトランペットとおんなじ」と思わせる。

⇒全音階・中低音域を使ってナチュラルトランペットとの違いをアピール。

⇒半音階や装飾音を使ってさらにキイトランペットの特徴を見せつける。

という感じですね・・・

 

3楽章の終わりでは、あっ、終わりか~、と思いきや、まだ曲が終わらない偽終止。などなど盛りだくさん。

↓ ソロが「ぱっぱかぱっぱ、ぱっぱかぱっぱ、ぱっぱかぱっぱ、ぱー」とよくある終わりのフレーズを吹いた後2小節のお休み(全部の楽器が休符です)で、「あれ、終わった?」と思わせておいて、そのあと、またソロの主題が鳴ります。

 

 

意外とお茶目なハイドン君でした。(あ、この頃は晩年で63歳頃?ですから、ハイドンおじさんだな・・・)

さあ、これで、あなたは定期演奏会を聞きに来たくなりましたね~

定期演奏会情報は、随時ホームページにアップしていきますので、お見逃しなく!